さいくりブログ

M師を訪ねて三千里
—美術に疎い私の珍道中—

2018年12月23日から26日までの記録
西條クリニックに勤めてよく分かったことがある。人にはいろいろタイプがあるが、自分はこれまで「間」や「遊び」というものを大事に出来ずに生きてきたなと。だが、西條クリニックに勤めてから、嫌が応でもこの問題に幾度となく直面させられる。私は趣味で茶道を長年しているのだが、人間の完成には様々な山の斜面があり、その斜面をそれぞれ完成させていくことが大切であり、特に自分が苦手と感じることに努力していくことが大事だと師匠に教えられてきた。そのことを西條クリニックに勤めながら日々感じていた。

2018年4月に、これまで開業以来「光の覚書」というワークショップでお世話になっていた松浦さんがボストンに留学されることになった。ボストンといえばハーバード、MITなど学術都市として知られているのはご存知のことと思う。それから、ボストン美術館は日本美術の所蔵が多数あり、日本との関係が深い美術館だ。岡倉天心が館長だったこともある。

2018年にとある資格試験があり、それは自身のこれまでのキャリアを振り返る機会でもあった。今後のことを考えると苦手だと感じている分野に飛び込んでいくのも必要かと思い、それを教えてくれた茶道にゆかりのあるボストン美術館に行こう、それで無謀にもボストンの松浦さんを訪ねて三千里という企画を立てた。

12月23日
ボストンローガン空港まで約14時間のフライト。さすがにつらい。松浦さんは親切にも空港まで迎えに来てくださり、お元気な様子。明日の打ち合わせをして別れる。

12月24日
クリスマスイヴ。キリスト教徒の方々は基本的に家族で過ごすので、日本のようにお店も開いていないし、美術館なども軒並み休館。まずはハーバード大学に行こうと思い、出発。11時に最寄り駅のHarvard Square駅に着く。松浦さんに案内していただき、構内を散策。リスがいっぱいいる。歩いていると予報通り雪がちらつき始めた。自然史博物館、美術館も休館。幼少期の頃、恐竜が大好きで、いろんな博物館に行ったことを思い出し、自然史博物館に行けなかったのが残念だなと思った。散策しながら、美術の流れについて色々伺う。たまたま私が好きな画家(ダリ、ピカソ、ムンク)と精神分析の時代的なつながりがあることが分かり、驚いた。また、アメリカン・アートの成り立ちについても色々教えてくださった。散策の後はハーバード大学の生協でお土産を買った。大学のロゴが入ったえんじ色のパーカーなど、ロゴ入りのグッズがたくさんあったが、驚いたのはプラスチック製の箸があったこと。MITには寄らず、街中に戻り、ボストンハーバー沿いを散策。ボストン茶会事件跡地、現代美術館を巡る(美術館は休館だった)。雪がちらついていたが、港沿いは広々としており、歩くには気分が良かった。店もほとんど閉まっており、人もほとんど歩いておらず静かだった。松浦さんが、東京はネオンや音がありますよね、と仰っていて、なるほどそうだなと実感した。

ハーバード大学外観
ハーバード大学外観

12月25日
天気は晴れ。クリスマスで店は閉まっているので、フリーダム・トレイルを歩くことにした。フリーダム・トレイルは、道に赤い線で目印が書いてあり、その通りに歩くと、ボストンの主要な歴史的建造物や跡地などを周れる。全部歩くと軽く半日はかかる行程。歩き始めて、天気は良いが昨日より格段に寒いと感じる。港の方まで歩いて、店があまりに閉まっていることと、寒すぎることで段々気分が落ち込んできた。それで進路を変えてチャイナタウンへ。中国語ばかり聞こえる、まるで別の都市かのような印象。他の店が閉まっている影響もあるのか、チャイナタウンは非常に人が多かった。昼食にベトナムのフォーを食べる。時差ぼけもあり、ホテルで少し仮眠をとる。午後、Copley駅で待ち合わせてトリニティ教会を見に行きましょうと松浦さんが仰ってくださったので、その時間までボストン・コモン、ビーコンヒルを散策した。ボストン・コモンは街中の穏やかな公園という感じで、滞在中、宿泊しているところから近いのもあり、度々行った。ビーコンヒルは美しいレンガ造りの建物が残っている街並み。出窓はボストンでよく見る古い建築様式なのだとか。Copley駅について、ボストン公共図書館へ。閉まっていたため、外観を眺める。アメリカ最古の公共図書館であり、非常に重厚で美しい外観をしていた。その後トリニティ教会に行くが、24日、25日は閉まっていると張り紙が貼られていた。建築様式もそうだが、ステンドグラスが素晴らしいとのことで、少しでも見られないかとぐるりと教会を回ったが、残念ながら見えなかった。その後プルデンシャルタワー近辺、ニューベリーストリートなどを散策、非常に都会的な雰囲気で、公共図書館やトリニティ教会の歴史的に古く、落ち着いた地域と隣接していることは面白いなと感じた。

ボストン公共図書館
ボストン公共図書館。26日に行ったら中に入れました

12月26日
今回の一番の旅の目的であるボストン美術館へ。年代の古い順から鑑賞。まずはエジプト、中東、ギリシャ、ローマ、中世ヨーロッパと見る。松浦さんに色々解説していただきながら巡る。昼食は美術館内のレストランがびっくりするぐらい混んでいたので、近くの店でとってから、現代美術、フォークアート、日本の仏像(日本のブースが改装中で閉まっていたので、仏像のみ)、オセアニアを見て終了。日本でも何度か美術館に行ったが、本当に詳しく勉強している方の解説を聞きながら見ると、こんなに楽しいのかとビックリした。

ボストン美術館
ボストン美術館

今回の旅を通して、苦手な山を少し登れたような気がしている。少なくとも、「苦手だから触れない」のではなく、「苦手だけど触れてみよう、自分なりに理解してみよう」と思えるようにはなった。

ボストンは寒かったが、静かで落ち着いた良い街だった。忙しい中案内してくださった松浦さんには本当に感謝しかない。

最後に、個人的にリスが好きなので、ボストン・コモンのリスの写真を。やや太めで非常に可愛い。

S__290660362
(アーキビスト2号)