さいくりブログ

なるほど!現代音楽

【日時】2019/08/29 19:30~21:00
【講師】吉田宗彰

【印象記】
Saijo Clinic Institute (略してSCI) 第1回目のワークショップは、『なるほど!現代音楽』と題し、2019年8月29日に開催されました。講師にお迎えしたのは音楽家の吉田宗彰さん。普段はウィーンを中心に活動されておられるのですが、今回ちょうど日本に帰国されていたため、なんとグッドタイミング!という訳で、西條クリニックにお招きしたのでした。

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クラシックの「現代音楽」は、ともかく「とっつきにくい」「難しい」音楽というイメージがあります。まるで不協和音のように聞こえたり、どのように楽しんだらいいのか分からない音楽、という位置づけであることが多いのではないでしょうか。講義では、そうした「現代音楽」がなぜこんなにも分かりにくいのかについてお話して頂きました。

吉田さんによると、バッハやベートーヴェンに代表されるクラシック音楽というのは、『調性』という西洋近代音楽独自の音楽体系に基づいて作られているのだとか。私達の耳は、この西洋音楽に慣れて(吉田さんの言葉を借りれば『毒されて』)おり、その音楽体系に基づかないルールで作られた音楽に対しては、「なんか変な音楽」と感じてしまうのだそうです。西洋近代音楽のルールに基づく楽曲であれば、小さい頃から聴きなれているため、なんとなく「悲しげ」であるといったニュアンスや、「終わりっぽい音」も分かるのだといいます。

こうした既存の音楽ルールに反旗を翻し、新しい音楽を作ろうとしたのが、19世紀末から20世紀前半のアルノルト・シェーンベルクといった音楽家たち。彼らは自由な音楽の形を探求し、『十二音技法』といった独自の音階技法を作り出しました。こうした活動が後に「現代音楽」と言われ、音楽の歴史に大きな変革をもたらしました。

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ワークショップでは、こうした耳慣れた『調性』に基づく音楽と、『無調』音楽を聴き比べて、現代音楽の分かりにくさが何に起因するのかを体験しました。中でも圧巻だったのが、無調音楽の名曲 ≪ワルシャワの生き残り≫(1947 シェーンベルク作曲)!

吉田さんおすすめの、ものすごく身に迫る音楽作品でした。強制収容所に連行させられるユダヤ人の慟哭が、『十二音技法』を使った合唱によって表現されています。

吉田さん曰く、「良い音楽は、『調性』や『無調』は関係ないです!現代音楽にはすごい作品が沢山あるので、ぜひ毛嫌いせずに聴いてみてほしい」とのことでした。

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「現代音楽」がどのような経緯で作られた音楽なのかを伺うことができて、幾分身近に感じられるようになった気がします。参加者の方からは、「現代音楽の分かりにくさがどこから来るのかがわかった」「それにしても不協和音にきこえる」等の感想をいただきました。吉田さんの熱烈な姿勢からも、「現代音楽」の魅力を垣間見ることができたたように思います(「この曲、まじエモいですよね」とおっしゃっていました)。

せっかくなので、ここに吉田さんが紹介して下さった音楽を記録しておきます!

1. Johannes Brahms《ピアノ五重奏曲》
2. Hans Werner Henze《ピアノ五重奏曲》
3. Franz Joseph Haydn《太鼓連打》Sym. Nr.103
4. Robert Schumann《子供の情景》
5. 大瀧詠一《君は天然色》・・・院長へのお気遣いありがとうございます。
6. Anton Webern《管弦楽のための5つの小品》op.10 Nr.2
7. Alban Berg《抒情組曲》
8. Arnold Schönberg《ワルシャワの生き残り》op.46

参加してくださった皆様、吉田さん、ありがとうございました!

という訳で、このSaijo Clinic Instituteでは、今後とも様々な分野で活躍されている方、生きがいをもって仕事や趣味に取り組んでいる専門家を講師としてお招きし、その面白さをお話してもらうというワークショップを開催していきます。
西條クリニックならではのおもしろ授業です。だれでも参加可能、参加費無料です。次回もお楽しみに!

【講師プロフィール】
現在ウィーンを中心に活動中。専門は作曲および音楽学。主に新ウィーン学派を中心とした20世紀前半のヨーロッパ音楽について研究している。主な論文として「アルバン・ベルク<ヴォツェック>第2幕第1場におけるソナタ形式の分析と考察」等がある。



Saijo Clinic Institute
西條クリニックでは,各専門分野の専門家をお招きして「西條クリニックならではのおもしろ授業」を開催していきます!
 私達のクリニックでは「リワーク」を「ただ復職すること」とは考えていません。あなたが「社会とどのように関わりたいか」を考え,「その社会の中で生きる力を身につけること」。それが本当の「リワーク」であると考えています。
 そしてまたプログラムを通じて「どう働くことが自分にとっての幸せか」を共有し,考える場所を提供することが,精神科クリニックの役割であると思っています。
 この『西條クリニックInstitute』では,様々な分野で活躍されている方,なおかつ生きがいをもって仕事や趣味に取り組んでいる方を先生としてお招きし,その面白さを伝え,または体験してもらえるようなワークショップを定期開催していきます。